映画・CM・映像

映画とCMの根本的な違いは何か。CMの撮影ではフレームの外側に気をつかわない。つかってはならない。モニタを覗き、フレームの内側をひたすら作り込んでいくのがCMである。あるいはセットにタンスがある。コンテにそれを開けるとなければ、中にものを詰めてはならない。何故なら、開けないのだから。映らないものに手間や銭金をかけてはならないのである。では映画はどうか。フレームの外側に気を配る。もちろんタンスにも衣装を詰める。役者が演技の流れでタンスを開けるかもしれないのだから。ここにスタッフの想像力が介在する。タンスにはどんな衣装が入っているのか。シナリオやセットから暮らしぶりを想像し詰めるわけである。この想像力はCMにおいては余計なことでしかない。

フレームとは、ある広範な光景の一部を切り取る枠であるのか、その内側に要素を収斂させるガイドラインなのか。という違いがここに浮かぶ。前者が映画のフレームであり、後者がCM(PVも)のそれである。ここでいう映画とは伝統的な映画である。桐里谷さんの映画のフレームは明らかに後者である。

その他、映画とCMの違いに「広い画」(映画)と「引き画」(CM)がある。同じロングショットでも、そのカットの意味あい・価値は異なる。これも根本的には上述のフレームの概念の違いに行きつくことではある。

以上は、さる映画監督と私(CM制作会社勤務歴あり)との世間話をまとめたものである。