帰省2011/映画「ノルウェイの森」

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反逆者☆磯部浅一 大逆罪☆難波大助 処女厨嘉村礒多 闇の男☆野坂参三 スパイ査問☆宮本顕治 踊る教祖☆北村サヨ …昭和二○○年頃に大河ドラマの主人公に選ばれそうなひとびとであるのだが、いずれも西暦一九○○年頃に本州の西端に生まれた連中である。すばらしき世代! 私はその地に生まれ、工場労働者の父親と、池永正明と江夏と大野豊好きの母親とにその地で育てられ、革共同学校にいくまでその地で過ごした。もしもあのままこの地ですごしていたなら。そう考えてみる。おそらくネット右翼になっているだろう。これは確実だ。パチンコをやっているだろうか。スープラに乗っているだろうか。「悪人」は怖くて見られないだろうか。なぜならそこに自らを見ることになるのだから。あるいはこのご時世にこの地で高校生であったなら。神聖かまってちゃんを聴いていてもたってもいられない衝動を夜な夜な抱いているだろうか。それなら仕合わせだ。そうあってほしい。

都市は媒体価値の集積なんだな …と、ろくに中吊りのない、地方の車輌にて気づく。on twitter

そんな山陽線であるが、戸田−富海のあいだの、海が見えたり消えたりする車窓の眺めはすばらしく、富海の集落もとてもよい。昨年訪れた際の写真はこちらである。この地で、唯一好きな場所である。


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ノルウェイの森」を読んだのはまだこの地で暮らしていた17歳のときであった。主人公と直子が出会うのと同じ17歳であった。誰しもがそれを村上の出た一流大学だと想う書きっぷりながらも、作中では二流大学としているので、随分嫌味なひとだなと想った。またよくバスに乗る小説だとも想った。都会の人はバスには乗らないものだと想っていたので驚いた。(都電が廃止に成っていく時期だからそうなのだろう。) 作中、小林緑の実家の書店に「週刊文春 毎週木曜日発売」とのビラが貼ってある件があるはずだが、本州の西端では土曜日発売だった。当時の編集長は花田紀凱、まだ野坂参三を追い落とす前である。

さて、映画「ノルウェイの森」。1)小林緑がサングラスを外すにいたるまで。 2)はじめて小林緑の自宅に上がり込み、ふたりしてぐるぐる歩き回るシーン、および 3)小林緑から父親が死んだ旨を電話で告げられる寮のシーン、この2と3のアンダー気味の画は、DCP上映であるゆえに暗部がつぶれないせいかもしれないけれども、息を呑む美しさであった。全般、中間色がきれいであった。続けて 4)60年代が舞台であるから当然古いファッションとなるけれども、とはいえダサくなく、その点でスタイリストの仕事が素晴らしい。 どうかいなと想ったのは、5)キヅキの自殺を原作と違い丁寧に見せる演出意図。 6)松山ケンイチの労働シーンが多くて、原話を知らないと大学を辞めたと錯覚し、わかりにくいのではないか。 7)大学教員の役は糸井重里でなく坂本龍一だろう。 8)首を吊った直子にトラックしていくカット、カメラを静止させずにカットが変わるのが勿体ない。 9)最後に直子を訪れ、ふたりして部屋で話し込むシーン、奥のアルミサッシの明部がきつい。フォーカスもそこらに来ているように見える。後処理でどうにかしたいところ。(フォーカスの甘い箇所は数カッとある) 10)いよいよ最後の池辺の直子・松山ケンイチ・レイコの3ショット、ここだけノイズがひどく、おまけに抜けが白飛びしている。 11)原話で好きな、寿司折りをくれる青年漁師さんが出て来ない。 12)モノローグの多い映画であるが、モノローグに画をあれこれ重ねていって一気に展開させる映画的な処理を試みておらず、そのために、かなりお話が省かれてしまい、原話を知らないとわかりにくいと想われる映画になっている印象。


闇の男―野坂参三の百年

闇の男―野坂参三の百年

*1:JR徳山駅新幹線ホーム

*2:新南陽市