空
三橋歌織
「(細かい状況は)分からない。ただ一つびっくりしたのは、朝、すごく天気がよかったこと」
「彼が生きているときは、天気が良くても暗く見えていた」
「母が『明けない朝はない』と言っていて、『そんなの絶対、嘘』って思っていたけど」
「彼(祐輔さん)を殺してから、怖くて仕方なかった代々木公園がきれいに見えた」
「そのとき、(自分は)笑っていた」*1
ビートたけし
あの、おれ、新宿で、大学を辞めようって決心して、いいやもう学校辞めた、って想ったときの、空の青さはたまんねえって、いまだに言うんだけど。あん時に完全に生まれ変わった…*2
母親からの仕送りで生活をし、そのような身分でありながらも馬券を買っていた私が、いわゆる自活を始めて最初に水道橋の場外馬券売り場にいった日、あれは晴れやかであった。天気が晴れていたかどうかはおぼえていないけれども。
それから曲がりなりにも映像を生業とし、恥をかき、地を這い続ける。そんなこんなの十余年を経て、映画の初号をあげ、東京現像所から調布駅に向かう、その時見た空は、もちろんただの暗闇であった。