けいおん!

テレビアニメというとキャプテンとあしたのジョーとおそ松くんくらいしか見たことのない私が、けいおん!を見る。たいへんなことである。なにしろ、好きなアニメキャラは?などと問われようものならば、金竜飛と答える以外に術がないようなニンゲンなのである。それがけいおん!である。

唯といったら斉藤唯、律といったら伊藤律、澪といったら「ダンスはうまく踊れない」、そんな昭和フルな私が、けいおん!を見ようと想い立ったのは、下のシーンを無性に見たくなったからである。

最終回でいいのかな、最終回なんだけど、律がさー、自分のカバンをドラムに見立てて、スティックでパシパシ叩いてるシーンがあってさ、こういうのいいよなって思う。 ○内○外日記「世界の終わりと『けいおん!』最終回ワンダーランド」(2009-06-19)

唯を待つ部室内の雰囲気はBGMがないせいか重苦しい(ここでの鞄を叩く律とか、さりげない演出もいい)。 イチニクス遊覧日記「「けいおん!」12話にぐっときた話」(2009-06-23)

初優勝時のPL学園に置き換えると、こうか。「木戸克彦を待つ部室内の雰囲気はBGMがないせいか重苦しい (ここで小早川毅彦を殴る西田真二とか、さりげない演出もいい)。」 こりゃもう野球ファンならば誰だって見たいシーンだろう。要するに、CMで言えば東北新社伊藤由美子石川寛あたりが挟み込みそうな、この鞄をドラムに見立てて叩くカットを見たかったのだ。で、いきなり12話から見るのもなんなので、1話から順にこのカットを目指して見ているわけだが。

けいおん!は高校一年の4月から物語は始まる。私の高校一年の四月といえば、またたくまに麻雀を覚えてすぐさま雀卓を囲み、一方で担任の教員に目の敵にされてやがて神経をおかしくするはめとなり、世間では阪急ブレーブスのいないパリーグが始まって、色川武大と青木伊平が死んだりした季節であった。生来、厭世的な私には、四月さえもそんなであった。中崎タツヤ「じみへん」の連載が始まったのもこの四月だけれど、「I Don't Live Today」、今日を生きられない、どうしようもない日々の始まりであった。

さて第1話、日頃アニメを見ない私には、音がすかすかなのが気になったりする。そもそもオープニングで画が音に対して3.4フレ遅れているように想える箇所が幾つかあって、カット数が足りていない印象をおぼえる。まあ30分番組に対してフレーム単位でどうこういうのは野暮なのかもしれない。などと想ったりしたのだが、新入生が入ってからは、その分カットが増えてお陰で「つむぎ」の、人物が下から上へのセリあがりが素早くなるなど、もっさり感がなくなっている…と想うが果たしてどうか。

第2話によれば秋山澪がベースを選んだのは控えめな性格から、バンドの中心のギターを遠慮してのことであった。私ならば何だろうか。といえば、ペダルスティールだな。ローリングストーンズの2度目の来日公演、アリス・クーパーのTシャツを着た東京外国語大学の男と一緒に行ったのだが、ロン・ウッドが膝の上でに何かを弾いていた。「大正琴みたいなの、ありゃなんだい?」と訊ねると、アリス・クーパーのTシャツを着た東京外国語大学の男は、それがペダルスティールだということを教えてくれた。それだ。ちなみにその公演の前、NHKの19時からのニュースで桜井洋子さんがストーンズにインタビューしていたっけな。

第9話で後輩が入部してくる。けいおん!はバンドものではなくて、部活ものであるわけだが、ならば「キャプテン」のように初期主人公たちが卒業しようとも話は続けられるではないか。谷口の卒業後にも丸井・イガラシ・近藤と物語が続くように。あるいはスクールウォーズだってそうだよな、と。

どうしようもなく気になるのは、文字要素をポスプロで入れていて、そのフォントが詰まらないことで、あんな味気ない書体で間に合わせてはいかんだろう。せっかくアニメーションを頑張っても台無しではないか。

DVDで一気に見ながら休憩がてらちょこまかと書いたのが以上で、そうこうするうちにいよいよ12話の入った6巻である。近所の自販機でカルピスソーダでも買って、見るとする。それでは。Москва Слезам Не Верит。