撮影およびフィルムについての、雑記


client:サッポロ product:黒ラベル agency:博報堂 production:サッソフィルムズ director:真田敦 cameraman:佐々木原保志 


2002年頃、フジかコダックの広報誌に佐々木原さんのインタビューが載っていて、それで読んだのであるが… この撮影は京成の上野−成田空港間の貸切車輌で行われている。よって終点に着くまでに撮りきらなければならない。16mmフィルムは35mmのそれの倍の尺を撮影できるので、ロールチェンジの回数を減らすことが出来る。また狭い車両での撮影であるため、機動性が重要となる。その2点で35mmよりも16mmのカメラ(フィルム)の方が優位であり、そのような事情により16mmでの撮影となり、結果、粒子感を感じさせる、フィルムライクなCMとなる。

フィルムで撮ってフィルムライクというのも変な話であるが、フィルムっぽさは35mmだときれい過ぎて出せない、という逆説にいきつく。フィルムっぽさとは何かといえば、粒子感やタテ筋の傷、パラ、あるいは映写機のカタカタいう音、すなわちノイズである。これはデジタライズによって除去されうるものである点において、アナログの記号でもある。(このCMは2002年のもので、前年までが中島哲也・矢崎嘉勝による山崎努豊川悦司温泉卓球に始まるシリーズ。こちらはフォトソニック4ERによるハイスピード撮影。これはこれで35mmフィルムでなければ撮れない代物である。)

もちろん16mmよりも8mmの方がさらにフィルムっぽい。8mmは主観的ですらある。引き画を撮ろうが主観的である。ニンゲンの見た目に近づける(カメラの高さ・広角具合etc)ことで、そのカットが主観であることを含ませるのが通常であるが、8mmはそれらを全く無視してもなお主観的である。それは劇中の人物の主観ではない。見る者の主観である。そのことはナカテツの「ぼくのなつやすみ3」のインサートカットが示す通り。