端尺2
「幸福ではなかったが、不幸だとも思わなかった。そんなものだと思っていた。」 (久世光彦「有栖川の朝」)
「パイナップルの汁なら、どんぶりに一ぱいでも楽に飲めるね。」 (太宰治「正義と微笑」)
「自分でやめようとしない限り、人に書くことをやめさせるものは何もない。ほんとうに書きたいと望んでいる者がいるとすれば、彼はそうするだろう。拒絶や嘲笑は彼を逞しくするだけだ。」 (ブコウスキー「死をポケットに入れて」042頁)
女の爪にはペニキュアが塗られていた。それを指摘すると女は塗ってあげよっかといって、サンダル履きの私の右脚をつかみ、5本の指にペニキュアを塗っていった。ペニキュアというのはそうそう落ちないもので、しかしそれでも徐々に剥がれおちていき、日々その様子を見ながら、女を想った。 … 気を持たせる女は罪人である。