「結局、オレが撮ると結婚式でもみんな葬式になっちゃうんだよ(笑)。」


○ 2010.03 旧竜土町(東京都港区)


荒木経惟荒木経惟の写真術」より

結局、オレが撮ると結婚式でもみんな葬式になっちゃうんだよ(笑)。 (52頁)

そりゃあ、写真に孤独感がないのはダメだよ。なんだかんだ言って、はしゃいでるけど実はこいつは一人なんだなって、見る人に思わせるのが写真術なんだよ。 (96頁)

写真も被写体との共同作業とかいろいろあるけど、映画はスタッフの人数が多すぎるね。映画も四、五人で作るんだったらいいけど、ああいう感じのはダメ。やっぱり映画は才能よりも、体力と暴力だね。(略)なんてったって自分との関わりのコトがいちばん面白いんだから。やっぱりエロとエゴというのが快感でしょ(笑)。そうすると、それを大人数でやったり、朝から晩まで時間かけてやったりしてると、自分の濃度が薄まっていくような感じがするじゃない。構想何年とか、一ヵ月かけて撮影とか、そんなの一日で済ませたいよ(笑)。写真はそういうせっかちな、スピード感だからさ。 (88-89頁)

だから、昔から言ってるけど、作風とか人生を変えようと思ったら、カメラを変えればいいんですよ。ライカな人生、ペンタックスな人生というのがあるんだよ。 (99-101頁)

写真を勉強するのに一冊だけ教科書を選べと言ったら、ザンダーの肖像写真集だね。とにかくまず、ちゃんと人と対峙する、そしてしっかりと見つめる、見つめ合ってシャッターを押す。それが写真の基本ですよ。それで自分の表現とか何とかじゃなくて、被写体の表現しているものをちゃんと複写する。 (119頁)

まずね、アタシの根底には、完璧なものを作るのが嫌だという考えがあるんだよ。でも、完璧なものとか、完全なものを撮るための「術」っていうのが絶対に必要だということは知ってるわけ。 (131頁)

最後の引用の後段であるが… 荒木は大学・電通で現像や照明の作り込みまでやり込み、それを礎とする。その果てにキャノンオートボーイでの撮影がある。古今亭志ん生が落語家同士の勉強会では高座と違って完璧な噺を演じたという逸話があるが、それにも通じる。スタジオで這いつくばるようにして撮影を見てきた私も、次のように想う。「無個性の撮影がちゃんと出来る、なんでもないものをきちんと演出できる、これがプロの撮影技師、CMディレクターの要件であろう」(twitter


荒木経惟の写真術 (フォト・リーヴル (05))

荒木経惟の写真術 (フォト・リーヴル (05))