私の好きなT字路と、まるで関係のない話。


○2010_10 南青山(東京都港区)
高等学校一年の私はひどく勉強が出来ず、そもそも無能で、志望校調査の用紙に立命館と書こうにも「館」を漢字で書けずに、仕方なしに他校の名を書いたほどであった。そのような私は当然、テストなどまったく出来ず、開始から程なくして、頭を上げていた。まわりはまだ机にかぶりつくようにしてカシャカシャとシャーペンの芯で用紙を削る音をたてているというのに。頭を上げ、まわりを見渡すと、同じようにやることのなくなった女がいた。どちらからということもなしに、ほほえみあった。その後その女と恋に落ち、カーテンの向こうでキスでもすれば、すてきな話かも知れないが、もちろんそんなことはなかった。昨晩、ためしにその女の名をgoogleで検索してみると、今では立派なひとになっていた。つまりは、あの ほんの一刹那が、女と無能者の、偶然の接点であったのかもしれない。

○2010_10 恵比寿(東京都渋谷区)
南青山と恵比寿、地方の工場労働者の息子とはあまりに不釣り合いな場所であるけれども、この2枚の場所が好きである。たまたま2枚ともT字路*1なのだが。

*1:T字路は俗称で、丁字路が正しい…と知ったのであるが、俗称の方を用いた方がいい場合もあり、ここではそれにあたる、という判断により、訂正しない。