ダサい眼鏡の女の子 / 「セレクション歌人26 東直子集」

映画「OLの愛汁 ラブジュース」(田尻祐司・99)で、主役の久保田あづみが自室にてダサいトレーナーを着ているシーンがある。そのダサさは、はたしてピンク映画の衣裳ゆえのダサさなのか、普通のOLと印象づけるための演出上のダサさなのか、判断がつかないのだが、とにかくダサい。成人映画初出演の久保田あづみにすれば裸になるのは恥ずかしかったろうけれども、見ている方にしてみれば件のトレーナー姿の方が恥ずかしかったぞ。

あるいは… 学校ではコンタクトレンズなのだが、合宿などで風呂上がりにダサい眼鏡をかけてしまう女がいる。ダサいそれは高校時代のものであろうか。すなわち大学に入ったのを機に外見に気を配るようになり、コンタクトレンズにしたのだろうけれども、寝る前は面倒なのでついダサい眼鏡をかけてしまう…などと事情を詮索するうちに、その女を好きになってしまうんだ、おれ。

嗚呼、気のゆるみからくるダサさって、かわいいなあ。で、鳥居みゆきさんは私に気があるのか、ダサい眼鏡+ダサいジャージを着て舞台に上がるのだ。ちょっと、やめてください、ぼくを誘惑するのは。

ここより前回も取りあげた東直子の短歌に話は移る。「セレクション歌人26 東直子集」は第一歌集「春原さんのリコーダー」、第二歌集「青卵」とその後のいくつかをまとめた書物で、お勧めである。ここでの東さんの短歌からは、進学を機にひとり暮らしを始めて、ついでにコンタクトにしたのだけれども、自室では高校の体育のジャージを…てな女を妄想してしまう。*1 要するに私好みの女である。最初期ゆえにしっくりしない歌も散見するのだが、しかしながら最初期ゆえの"歌わずにはいられない衝動"がそれらの綻びから感じられ、君に胸キュンしてしまう。きれいにまとまってしまうと、かえって心を揺さぶることができないものだ。ゆえに字余り字足らずの歌を、それを理由に否定しない。

以下、上述の書籍よりいくつかを紹介。 (一行一首であって、改行しているのではない)

あの時は待っていましたきっちりと合わせた膝に花を咲かせて
いつまでもですます調で語り合うわたしたちにも夏ふりそそぐ
ん、と言ったきりの沈黙そのあとは気持ちよさそに笑うばかりで
少し遅れてきた人の汗ひくまでのちんちろりんな時間が好きよ

帰ろうねもう帰ろうね海に降る雨を見ながらずつと見ながら
ああもう、どっちでもいいって思ってた黒いスウェットむぞうさに着て
もうここにおられんようになりました妻うらがえりうらがえり消ゆ

泣きながらあなたを洗うゆめをみた触角のない蝶に追われて

上のブロックから「春原さんのリコーダー」、「青卵」、青卵以降となる。


東直子集 (セレクション歌人 (26))

東直子集 (セレクション歌人 (26))

*1: あくまで作品からの妄想であり、実際の東さんとは程遠いことに注意されたい。実際の東さんは眼鏡すらかけていない。