Thus Spoke Porn Master.
代々木忠 1938− 華道師範、興行師を経て、広島代理戦争の最中の極道になる。「左手小指の欠落はそのころの生きてきた証でもあった」(本橋)。その後成人映画の世界に入り、アル中になったりなんだりで、AV監督に落ちつく。そんな代々木が繰り広げる人生説話を本橋信宏は次のようにまとめる。
きょう一日生きた自分、幼いころからいままで挫折しながらも生きてきた自分、そんな自分を自分が受け入れて誉めてあげなければいったい誰が誉めるというのだ。
(本橋信宏「にくいあんちくしょう」257頁より)
村西とおる 1948− (天皇の具合が悪くなったり、ブルーザー・ブロディが死んでしまったり、阪急ブレーブスが消滅したりの そんな年に誕生したダイヤモンド映像は、経企庁が泡銭景気の瓦解を宣言した92年2月に倒産、村西は多額の借金を負う。)
(村西とおる「元気ですか、ありがとう、許して下さい。」より)(滞納した家賃を請求しにきた大家に)
妻はその場に土下座をして「スミマセン、スミマセン」と謝りました。
泣いていました。
おびえて妻の背中に覆いかぶさった息子の指先が小きざみに震えていました。
私は・・・ただ黙っているだけのクズでした。
(略)
あなたさまは前科はおありですか? 私は前科七犯です。
あなたさまの借金は? 私は50億です。
あなたさまの年齢は? 私は60歳です。
今日も今日とて、パンツを脱ぎ脱がせる姿をご披露しながら生きております。
- 作者: 本橋信宏
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2000/07
- メディア: 文庫
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本橋信宏の言葉が冴える書籍である。(ここに登場する"異端"は代々木・村西の他、梶原一騎・竹中労・麻魔羅少将・黒木香・石川一雄・蛭子能収・杉山治夫・佐藤太治・塩見孝也etc) 無人島に持っていくなら … などという設問がよくあるけれども、そのようなところにいくより夜逃げの方がよほど現実的である私は、夜逃げする際にはこの文庫をかばんにつっこんで出かけようと決めている。
「金ピカの八〇年代末、たしかにあの頃村西とおるのもとに集まったアウトローたちは金とおんなの海を泳いでいた。水平線の向こうにもっと何かがあると信じて。それは男たちのあさはかな夢かもしれないけれど。」 *1
「人間とは畢竟食って寝てやることなのだ。」 *2
「でも処世術に長けた人々がのさばりかえるいまの世の中で、三葉虫のように海底にへばりつきながら愚直な生き方をする人間もいいじゃないか。愚直な道をみずから選んだつもりの僕はこの男を信じる。夢につぐないはいらない。」 *3
「人生にはむだなことなんてひとつもないんだ。」 *4
村西とおるは二〇〇年後 大河ドラマになるよ、と俺の空想上の友人が言った。