ラストショー / 亀有名画座

亀有東映としてスタートし、80年代初頭からは成人映画の名画座として、日活ロマンポルノ、ピンク映画の特集上映やイベントを積極的に行ってきた亀有名画座が、道路拡張工事の施行に伴い、99年2月末をもって閉館することになりました。亀有名画座の作りあげた歴史の重みを再確認し、その功績に感謝の意を込めて、その最後を華々しく飾りたいと思います。  (宣伝ビラより)

おれのザ・ジョッキー南井克巳が引退するその日、東京葛飾のピンク映画館・亀有名画座が最終上映をむかえた。99年02月28日のことである。亀有がどこにあるのかも知らずにいた私であるが、電車を乗り継ぎ乗り継ぎして駆けつけた。劇場の廊下の壁にはいたるところにマジックでメッセージが書かれ、売店では黒のタートルネックを着た葉月螢が売り子をしていた。かろうじて座席に座ることができたのだが、しだいに通路さえも客で埋まっていく客入りで、私の前方には吉行由美が大きな荷物を抱えて座り込んでいて、出先から来た様子であった。

最後の上映作品は神代辰巳の「恋人たちは濡れた」(73)。千葉の映画館を舞台とした映画で、ラストショーになんとふさわしいことか。それが終わると今井支配人が挨拶に立ち、感謝の言葉と共に、「ぴあ」の成人映画欄の廃止と出来たばかりの阿佐ヶ谷ラピュタが成人映画を上映しない旨を宣言したことを批判したと記憶する。しかし支配人を新聞社のカメラマンが取り囲んでいたためにその姿を見る事はできず、こいつら犬神に憑かれて不幸になればいいのにと想うた。帰宅後、南井が最後の競走を1着で終えたと知る。

それまで行くことのなかった映画館に最終上映日だけ行って感傷的なことを書くのは、件のカメラマンと同等のクズであるように想うので、当日の記憶を並べるに留める。その日の写真をまとめたこちら(追記:天野譲二さんのところであった)によると、上述の"メッセージ"云々は壁でなくそれ用の紙とある。記憶の記録ということで、あえて訂正せずそのままにしておく*1。件のサイトの右側二段目の写真のいちばん右の女性が葉月螢である。(ほら 黒のタートルネックでしょ) また手元に残しておいた宣伝ビラには最終日にトークショーなどないのだが、幕間に若松孝二と誰だかのトークショウがあったはず。この劇場が「こち亀」にも登場したこと、ドラマのロケにも使われたことなどを誰だかが話したと記憶する。

「70's〜90's ピンクからロマンポルノ・時代を駆け抜けた43作品一挙上映!! ラストショー亀有名画座

上映プログラムを書き写す。27(土)は11:00から翌朝05:08までのオールナイト。なお料金は当日1200円・前売1000円であった。

02-24(水)
「姉妹どんぶり 抜かずに中に」(97) 吉行由美
「ドすけべ母娘」(95) 松岡邦彦
「人妻銀行員 不倫密会」(98) 瀧島弘
「巨乳 はさんで咥える」(95) 国沢実
「獣たちの性宴 イクとき、いっしょ」(95) 今岡信治
「白衣いんらん日記 濡れたまま二度、三度」(97) 女池充
「コギャル喰い 大阪テレクラ篇」(97) 友松直之

02-25(木)
「女囚 いたずら性玩具」(98) 荒木太郎
「若妻不倫の香り」(98) 鎌田義孝
「禁じられた情事 不倫妻大股びらき」(96) 榎本敏郎
「イケイケ電車 ハメて、行かせて、やめないで」(97) 田尻祐司
「連続ONANIE 乱れっぱなし」(94) 上野俊哉
「あなたがすきです、だいすきです」(94) 大木裕之
「美人秘書 パンストを剥ぐ」(97) 池島ゆたか

02-26(金)
「エロスは甘き香り」(73) 藤田敏八
「巨根伝説 美しき謎」(82) 中村幻児
「ニッポンの猥褻」(93) 深町章
「緊縛白衣の天使」(83) 中山潔
「地下鉄連続レイプ」(85) 片岡修二
「不浄下半身 尼寺の情事2<完全版>」(98) 北沢幸雄
「キャバレー日記」(82) 根岸吉太郎

02-27(土)
「(秘)湯の町 夜のひとで」(70) 渡辺護
「ラビットセックス 女子学生集団暴行事件」(80) 小水一男
「襲られた女」(81) 高橋伴明
「濡れ牡丹 五悪人暴行篇」(70) 梅沢薫*2
「不倫妻の性 快楽あさり」(92) サトウトシキ
「ラブホテル」(85) 相米慎二
「緊縛の仕置」(「ザ・SMレズ」に改題)(85) 北川徹(磯村一路
「(秘)女郎責め地獄」(73) 田中登
「アブノーマル 陰虐」(88) 佐藤寿保
「ときめきの午後」(88) 橋口卓明
「若奥様のナマ下着」(87) 石川均
「牝臭 とろける花芯」(96) 瀬々敬久
「変態家族 兄貴の嫁さん」(84) 周防正行
「ラストキャバレー」(88) 金子修介

02-28(日)
「駅前欲情シネマ 悶絶遊技」(「性感クリニック 暗やみでモミモミ」に改題)(91) 渡辺元嗣
「ぼくらの季節」(83) 廣木隆一
「生贄夫人」(74) 小沼勝
神田川淫乱戦争」(83) 黒沢清
「十三人連続暴行魔」(78) 若松孝二
「痴漢電車 下着検札」(「痴漢電車 朝の悦しみ」に改題)(84) 滝田洋二郎
「変態テレフォンONANIE」(92) 佐野和宏
恋人たちは濡れた」(73) 神代辰巳

亀有名画座…「常磐線各駅停車亀有駅下車徒歩5分 南口ゆーろーど商店街直進、突き当たりを左折」(上映ビラより)。

*1: 天野さんよりブログにて「いつも入って受付を抜けて右側の廊下に模造紙が張ってあり、そこに来館客がいろいろ書き込めるようになっていました」とのご教示をいただいた。

*2: ビラには「追悼上映」とある。梅沢作品はひと頃、アテネフランセで上映されていたか。